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趣味で書いてる文章をのっけてます。

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CHILD HOOD 

   一、

 実生と俺は幼なじみ。だから、もう十五年の付き合いになる。家が向かい合っていて、小学校も中学校も一緒だった。
 そしてこの間、揃って地元の公立高校に合格した。
 同い年なのに年上ぶる実生には、時々腹が立つ。でも、俺たちはキョウダイのように育ってきた。
 お米の実る頃に生まれたから、「実生」。読み方は、「みう」。
 ちなみに、俺の名前の「大地」も、お米が「大地の恵み」だからだそうだ。この名前の由来を聞いたとき、もし俺が女に生まれていたら「恵」になっていただろうと思った。
 俺はそう思ったことは無いのだけれど、実生は「カワイイ」らしく、男子に人気だ。中学では、実生への手紙やプレゼントを俺に託していく男子生徒が、ずいぶんいた。
 まあ、恋をしたい男子たちには悪いけれど、実生は恋愛に興味は無いらしく、ことごとく無視していた。そしてなぜか俺はホッとしてたりする。

 俺の母さんと実生の母さんは、中学・高校と同級生だったから、もう二十五年来の親友だ。今でもすごく仲が良くて、よく一緒に買い物や旅行に行ったりしている。
 実生の父さんは中学校の先生だ。とてもやさしい人で、小さい頃はよくキャッチボールなんかをして遊んでくれた。生徒からも好かれているみたいで、勉強を教わりに来る生徒もたくさんいる。
 でも、教師の子どもが頭が良いとは限らないらしい。実生を見ていてよくわかった。・・・俺だって人のことは言えないんだけどね。
 俺の父さんは、小学校の用務員をしている。子どもたちから「修理のおじさん」と親しまれている。
 休み時間には、子どもたちに誘われてドッヂボールをしてるんだよ。と楽しそうに話す父さんを見ていると、俺も将来は父さんみたいに楽しく仕事をやりたいな、と思う。
 実生も俺も一人っ子。だけど俺たちはキョウダイみたいなものだから。
 たぶん実生も寂しくないと思う。

 中学の卒業式も無事に終わり、誰にもボタンをねだられることのなかった俺の制服は、たんすのなかで眠りについた。
 俺が片想いしてた女の子は誰かのボタンをうれしそうに、そして大事そうに握っていた。


   二、

 四月の第二水曜日。
 実生と俺の、高校の入学式の日だ。
 朝、早起きして制服を着てみた。中学校と同じ学ランだったけど、なんだか大人に近づいたような気がした。
「実生、早く起きなさいよ」
 向かいの家から、実生の母さんの大声が聞こえてきた。実生はまだ起きないようだ。毎朝聞こえてくるこの声に、この近所の人たちは慣れている。聞こえない日は、心配されるほどだ。
 俺は一階へ降りていった。母さんが朝食の支度をしていた。
「ダイチ、今日はお弁当要らないんだよね」
「要るよ。前に言ったじゃん」
「ふーん」
 …沈黙が流れる。
 恐る恐る口を開いた。
「無いの?」
「無いよ」
 待っていたかのような即答が返ってきた。-そして会話は終わった。

 七時四十分、実生が外から俺を呼ぶ。実生の食べるスピードが速いのか、俺が遅いのかは知らないが、昔から迎えに来るのは実生だった。
「ダイチ早くしてよ。早くしないとバス行っちゃうよー」
「待てって。ヒマならキョンと遊んでな」
 実生が自転車のスタンドを立てる音が聞こえ、すぐに犬の鳴き声と、実生の走り出す音が聞こえてきた。
 キョンは我が家で飼っている柴犬だ。誰にでもすぐに好かれる。近所の小学生と実生のいい遊び相手だ。ただし番犬には向かない。

「いってきまーす!」
 自転車に乗り、実生と並んで走り出す。
 いつもと同じ時間に同じ景色を見ているだけなのに、いつもと違った新しい感じがした。
「もう高校生か」
「まだ高校生だよ」
「そうか?」
「だって、まだ15年しか生きてないんだよ?」
「うーん」
「ま、人それぞれだね。考え方は」
 生意気に、このやろー。
「実生は、何部に入るんだ?」
「あたしはね・・・歌を歌いたいな」
「ふーん。じゃあ、合唱部か」
「ううん。じゃなくって。なんていうか、最近の歌みたいな、ギターとかドラムとか・・・」
「ロックみたいな音楽か?」
「うん、そんな感じかな」
「ふーん」
 確か、軽音楽部がそういう音楽をやっていると聞いたことがある。
「ダイチはやっぱり野球なんでしょ?」
「当たり前だろ」
「ふーん。飽きないんだね」
 飽きるわけがない。
 俺は小学校の四年生から野球をやってる。近所のみんながやり始めたからと、父さんに頼んで地元の少年野球チームに入れてもらった。もちろん初心者だったから、一から野球を教えてもらい、五年生になるまでは徹底的に基礎を学んだ。
 六年になるとその成果が出てきて、チームのクリーンアップをつとめられるようになったのだ。もちろん中学でも野球部に入った。練習は厳しかったけど、野球が楽しくって仕方なかったのだ。


   三、

 学校に近づくにつれて、新しい制服に身を包んだ新入生が多く見られるようになってきた。
 校門の前には教師団と上級生たちが立っていた。大きな男たちが時々、目を合わせないよう努力しながら通る新入生に声をかけていた。なんと言っているのかはわからないが、小さいほうが怯えてるのはよくわかった。
 二人で自転車をおしながら校門をくぐると、身体中にたくさんの視線が走ってくるのがわかった。
「おい」
 一人が俺に声をかけてきた。うわ、でかい。
「おまえ、サッカーやらないか?」
 サッカー部のキャプテンだろうか。存在感と威圧感がある。迫力はかなりのものだ。         
「すいません。俺、野球部に入るつもりなんです」
「ふーん。野球やってんのか?」
「あ、はい。小学校から」
「そうか。野球が好きなんだな」
 大きな彼は、がんばれよと俺に笑いかけてくれた。
 結局、野球部には声をかけてもらえなかった。悔しかったけど、期待されてないほうがやりやすいかもしれない。
 
 先生たちの誘導で駐輪所に向かった。まだ駐輪する場所は決まっていないらしく、どこでもいいと言われたので、面倒な駐輪器のない場所に停めた。
 近くでクラス分けの名簿をもらい、自分の名前を探した。第一学年は、一組から八組まである。
「あたし二組だ」
 実生が先に見つけたようだ。
「おっ、あった」
 俺の名前は一年二組の行にあった。これで、一年間の思い出を作る場所が決まった。
 一緒にもらった校舎内の地図で、教室の位置を確認していると、後ろから肩をたたかれた。振り向くと見覚えのある丸顔が笑っていた。
「よお。ダイチ、何組だった?」
 中学でバッテリーを組んでいた西本龍だ。背は平均より少し低いくらいで、体重は平均より五キロくらい上のコロッとした体型。
「おう。リュウ。この高校、受かってたのか」
 リュウには悪いが、こいつは落ちたとばかり思っていたのだ。
 リュウは、なんとかね。と笑っている。
「俺と実生は二組だって。お前は?」
「俺は一組だった。でも、知ってるやつが全然いないんだぜ?どうしよう」
 知ってる人がいないというのは、人によってはけっこうつらいものだ。でも積極的に人と話せるリュウなら大丈夫だろう。現にリュウは言葉のわりに楽しそうだ。
 中学時代の友人を数人見かけて話をした後、早めに教室に行ってみようと実生が言うので、三人で教室に向かった。


   四、

「ねえ」
 階段を上りながら、リュウと俺がクラス分けの表を見ながら知り合いの名前を探していると、実生が声をかけてきた。実生は俺たちの少し上にいた。
「なに?」
 …実生を見上げた俺とリュウは、揃って名簿に目を戻した。実生は気付いてスカートを押さえた。
「あ、今見たでしょ!」
 実生の少し怒った声が耳に届くけど、ヘタに見上げられないし、否定も出来ない。リュウは顔を真っ赤にしてた。
 あー、びっくりした。昔から見慣れてたはずなんだけどな。-もしかしたら俺の顔も赤いかも。
 
 三階に着くと、奥から一組、二組、三組と教室が並んでいた。二組の前でリュウと別れて、実生と俺は教室に入った。中学の時よりも机の数が少ない。一年生は三十人×八クラスだ。早めに来た数人の生徒が、まばらに座っている。
 前の黒板に座席表が貼ってあったので、それぞれの席を確認しに行った。俺は二列目の三番目で、実生は五列目の一番後ろの席だった。六列で、各列五人。やはり、初めはアイウエオ順に並んでいた。実生が座席表を見ながら珍しそうにつぶやく。
「珍しいね。男女混合なんだ」
 そういえばそうだ。今までは奇数列が男子で偶数列が女子っていうのが当たり前だと思ってた。僕の隣は男子だし、実生の前の席も男子だ。ふーん、面白いな。
 俺達より先に来ていた人たちは、知り合い同士じゃないらしく、みんな本を読んだり机につっぷしたりしていて静かだった。どれも初めて見る顔だ。どのくらいの数の中学校から生徒が来てるのかな。
「リュウ君のクラス、行ってみない?」
 実生が言った。退屈になったのだろうか。
 
 一組は二組と対照的で、とてもにぎやかだった。はじめ、リュウは一人でぽつんといるかなと思って探してたけど杞憂だった。一番にぎやかな集団の中で、楽しそうに笑っていたのだ。
「リュウ」
 俺が呼ぶと立ち上がって、笑顔でこっちに来た。
「おう、どうした?」
「いや。まだ他の人が少なくてさ」
「ねぇ、リュウくん。あの人達、みんな知り合いなの?」
「いや。さっき会ったばっかだよ」
 それにしては仲良さげだなと言うと、お前らも来いよと彼らの所に引っぱられていった。男子も女子も楽しそうに話している。
「こいつがさっき話してたダイチ。で、こっちが実生さん」
 リュウが紹介すると、男子の目が実生に釘付けになった。女子の目が俺に釘付けになるかもしれないと、ちょっと期待したが、残念ながら。
「ねえ」
 中の一人が話しかけてきた。
「ホントに先生にハゲって言っちゃったの?」
「え?」
 なんだ?リュウは何を話したんだ?
「お前、職員室の窓にボールぶつけて、教頭に怒られてさ。逆ギレして説教の途中で言っちゃったんだよな」
「ハゲって?」
 女子の一人が楽しそうに訊いてくる。
「いや、つぶやいただけだよ」
 必死で否定しようとしたのだが、リュウにうまく利用されただけだった。
「先生。西日が反射して、すごくまぶしいんですけどってな」
 俺の口まねをしながら手をかざす格好をすると、周りから笑いがわいた。
「だってホントにまぶしかったんだぜ」
 またどっとわいた。リュウは笑いながら話し続けた。
「職員室にいた先生達も気付いて、みんな笑いをこらえてたのに、教頭だけ気付かないんだぜ?マジメにカーテンを閉めに立ち上がるもんだから、先生達吹き出しちゃってさ」
「あの後、教頭にすげぇ怒られたんだぞ。あ、でも、他の先生からの待遇が良くなった気がしたな」
 教室は爆笑に包まれ、みんな笑顔で俺をからかった。-いいなあ、この雰囲気。
 他の人も、自分の中学校の話とか、友人の奇怪な行動なんかを話して、新たな出会いを笑顔で飾った。チャイムが鳴っても、教室は笑い声で満ちていた。


   五、

 一組の教室から急いで戻ったが、まだ担任の先生は来ていなかった。
 席について周りを見回してみると、見覚えのある顔がいくつかあった。名前は知らなくても、野球の試合なんかで会ったことがある人がいるみたいだ。
 実生は早速隣りの女の子と話している。ショートカットでなかなかカワイイ子だ。
「おーい」
 後ろで声がした。振り向くと隣の席の男子が俺を見ていた。口元がにやけているのを隠そうともしない。
「ん?」
「お、やっと反応したか。なんだ、女の方なんかじっと見て。一目惚れか?」
 なんだこいつは。俺は少しムカッときた。
「うっせえな」
「おいおい、怒んなよ。あの子は、俺もカワイイなって思ってたんだよ」
 だろ?と、言いかけたけど、あまりにも馴れ馴れしい態度だったので、答えなかった。すると、勝手に自己紹介を始めた。
「俺は吉田ひろき。関口宏の宏に、松井秀喜の喜で宏喜。お前、野球やってたろ?二中のピッチャー。オレ、南中でショートだったんだ」
 こいつよくしゃべるなあと、感心しながら聞いていた。ああ、そういえば見覚えがある。話がやっと止まったようなので、ひとつずつ答える。
「わかった。俺はダイチ。みんなダイチって呼ぶから、そう呼んでくれていいよ。俺もお前に見覚えがあるな。なかなかミートが巧かったな」
 わざとひとつひとつの質問にゆっくり答えてやったけど、ヒロキはにこにこしながら聞いていた。
「ダイチは高校でも野球やるのか?」
「そのつもりだけど」
「そっか。俺は硬式はこわくてさ。中学と同じ軟式野球の愛好会があるっていうから、それに入ろうと思ってるんだ」
「へえ。軟式野球もあるんだ」
「ま、愛好会だけどな」
 ヒロキは、硬式は人数も多くてレギュラーなんかとれそうにないとも言い、俺をちょっと不安にさせた。そしてよかったらお前も軟式にしないかと誘ってきた。
「いや、やっぱり硬式の方で自分の力を試してみるよ」

 教室がだいぶ騒がしくなってきた頃、やっと担任が教室に現れた。まだ新しい出席簿を左脇に抱えて、教室のドアを開けたとたんに、教室が水を打ったように静かになった。
「おお、お前ら。初日っから騒がしいんで安心したぞ」
 教室の張りつめていた空気が、一言で緩んだのがわかった。
「えっと、じゃあ俺の自己紹介から始めようか」
 教室を見回して、自己紹介を始めた。みんな静かに聴いている。
「名前は関口次郎といいます。教科は国語。サッカー部の顧問をやってます」
 なるほど。サッカー部の顧問ということは、普通の日は校内もジャージだろうな。今日は入学式だから、さすがにスーツだけど。
「何か質問はあるか?3つまで許すぞ」
「彼女はいますか?」
 待っていたかのように、離れたところの男子が訊いた。独身っぽい男の先生なら彼女の有無。女の先生なら彼氏の有無。これが定番だろうな。
「彼女は・・・いないな。でも奥さんがいる」
 女子たちの笑い声が響いた。すぐに手が五本ほど挙がり、先生が指名する。
「先生は、何歳ですか?」
「知りたいのか?」
「知りたーい!」
 クラス中が声をそろえる。出会ったばかりとは思えない合唱だ。
「さんじゅー、ひく、に」
 二十八歳。たぶんみんなもう少し若いと思ってたのだろう。あちこちで意外そうな声があがる。
「だろ?俺いつも若く見られるもん」
「初体験はいつ?」
 部屋が静まりかえった後、大爆笑が教室を駆け回った。誰が訊いたのかと思ったらヒロキだった。男子も女子も。恥ずかしそうだけど、みんな笑っている。
「秘密。・・・と言いたいとこだけど、実はな-」
 先生はニヤつきながら、同じくニヤついてる俺たちを見回して、静かに言った。
「高校の卒業式の日だ」
 どこかで「早っ!」という声があがったが、笑い声と拍手にかき消された。「相手は誰か」と言う質問には「もう三つ答えたろ」と言ってはぐらかしていた。
「さてと。先生のことはよくわかっただろうから・・・」
 まだ笑顔が消えない教室。
「出席をとろうか。呼ばれたら立ってくれ」
 いろいろな名前。いろいろな顔。これから一年間を共に過ごす仲間の顔をしっかりと覚えた。いや、覚えようと努力した。覚えるには長い時間が必要だ。


   六、

 入学式は思った通りつまらなかった。「きれいごと」を並べたスピーチは聴き飽きた。ただ、応援団による校歌の紹介は迫力があった。歌詞は聞き取れなかったけれど、大きな動きと大きな声で校歌を歌う姿には感動した。
 暇をもてあましていた俺がきょろきょろしていると、俺と少し離れた所に座っている男子と目が合った。目を逸らしても良かったのだけど、俺は笑いかけた。ホッとしたのか、彼も表情をくずしてくれた。
「暇そうだね」
「やっぱりそう見えるか」
「校長に見せてやりたいくらいの『退屈オーラ』を出してたよ」
 ふたりで、ははは。と笑った。
「二組だよね?」
「うん。俺はダイチ」
「ダイチか。僕は三組の河原ナオトだよ。よろしくな」
「おう。じゃナオト、よろしくな」
 校長先生のあいさつは、恰好の自己紹介タイムになった。感謝しなければ、校長先生に。
 ナオトは県外の中学校から受験してきたそうだ。もっとも、県外といっても自転車通学できる距離らしいが。
 彼は、小学校の低学年からずっとサッカーをやっているそうで、県の選抜にも選ばれたことがある。と、照れながら話してくれた。
「じゃあ、当然サッカー部なんだね」
「もちろん。ここの学校はなかなか強いからな」
 そういえば学校見学に来た時に、パンフレットの部活紹介ページに大きく「全国大会出場」と書かれていた。レギュラーになるのは、きっと大変だろうな。
「ダイチは?」
「俺は野球部。昔っから野球やってるからね。ま、ここは大して強くないんだけどね」
 それからも部活について話していたが、校長先生の話が終わり閉式になったので、お互いのクラスの列について教室に戻った。
 彼は、大人っぽい女子と話をしながら3組に歩いていった。あれは知り合いかな・・・もしかして彼女かな。ちょっとうらやましかった。


   七、

 教室に戻ると、関口先生から明日の連絡を告げられて、すぐに放課となった。
 実生はもう友達ができたらしく、一緒に部活を見学に行くと言ってどっかに消えた。俺も野球部を見学するつもりだったので、一緒に行こうと思ったが、リュウがいない。
 階段の踊り場でリュウを見つけると、ちょうど向こうも気付いたらしく、
「おー、ダイチ。見学行こうぜ」
と、声をかけてきた。俺は手を上げて応えた。

「リュウはどこやる?」
「にゃに?」
 グラウンドに向かいながらリュウに話しかけたが、妙な返事が返ってきた。歩きながらパンを食べていたらしい。
「ポジションだよ」
「ああ。俺は高校でもキャッチャーやりたいな。ダイチは、ピッチャーやるんだろ?」
「・・・うーん」
 どうしようか悩んでいたのだ。硬式は軟式と違い、気をつけなければ肘とか肩とかを壊しやすいのだ。
「できればやりたいけど、志望者が多かったら外野にしようかな」
「ふーん。お前はピッチャーのほうが向いてると思うけどな」
 うーん。ありがとう、リュウ。3年間、ずっとバッテリー組んでたんだもんな。
「ところでさ」
 一人感動していると、リュウがなぜか顔を赤くしながら口を開いた。
「今朝の実生ちゃんのには、ビックリしたな」
 ・・・感動して損した。このエロ・キャッチャーが。

 到着したグラウンドには、野球部員ひとりもいなかった。今日は練習は休みで、金曜日から再開するらしい。俺らと同じように見学にきてた一年生が、その友人と話しているのが聞こえた。
「しょうがねえなあ。帰るか」
 リュウが立ち上がり、伸びをしながら言った。
「そうだな」
 俺も腰を上げる。
 
 俺とリュウが自転車置き場に行くと、ちょうど実生と、一緒に消えた友達がいた。
「あれダイチ、見学していくんじゃなかったの?」
「いや。今日、練習が休みなんだってさ」
「そうなんだ」
「実生ちゃんも一緒に帰らない?」
 リュウが少し顔を赤らめて言った。すぐに赤くなるんだな。
「うん、いいよ」
 リュウはずいぶん嬉しいようだ。まったく。顔にしまりが無いっていうのは、こういうこ顔のことだろう。
 ちょっと待ってて、と、実生は友達に何か言い、別れてこちらに歩いてきた。結局、実生と俺とリュウの三人で帰ることになった。こんなふうに実生と帰ることも少なくなるんだろうな。
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[ 2006/05/06 16:42 ] ストーリー | トラックバック(-) | CM(2)
このコメントは管理者の承認待ちです
[ 2008/12/24 13:14 ] [ 編集 ]
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[ 2008/11/23 15:57 ] [ 編集 ]
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