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趣味で書いてる文章をのっけてます。

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愛すべきは、夏の風。[1] 

1、


 いつもと同じように、僕は腕時計をみる。短針も長針も、秒針までもが、黒板の上にかかっている時計と一緒に動いている。
 あと十二秒。あと九秒。あと七秒。五、四、三、二、一、・・・・・・・・・ほんの微かな、よほど集中していない限り聞こえない音をたてて、ふたつの時計は午後三時を示した。
 なんとも間抜けな感じのするチャイムが鳴り、数人の生徒が喋り続ける教師を無視して机上を片付け始める。
 教師はなんとか一段落つけたようで、持っていた教科書をぱたんと閉じる。
 その瞬間、誰も号令をかけていないが、全員が立ち上がる。そして、誰かの号令で全員が礼。
 教卓の教材を片付ける教師を尻目に、次々と生徒が教室を飛び出していく。飲み物やパンを買いに行く生徒、友達を誘ってトイレに向かう生徒、恋人に会いに行く生徒もいるようだ。正直、憎たらしい。
 僕は机の横のかばんから、一冊、文庫本を取り出す。木から作ったという味のあるブックカバーの下は、大したものじゃない。よくある推理小説だ。暇つぶしに持ってきたのだが、なかなか面白くなってきた。


2、


 ん? なんだか廊下が騒がしいぞ。
 教室にいた生徒たちがドアの方へ集まっていくのが、視界にはいる。
 てめえがなんたらかんたら、うるせえなんたらかんたら、という甲高い声が聞こえてきた。どうやら女子の喧嘩のようだ。学校の廊下で喧嘩とは、なかなか派手なことをするもんだ。
 おー。鈍い音がしたぞ。
 おー。泣き声が聞こえるぞ。ついに手を出したか。最近の女子は怖いもんだ。
 耳だけに神経を集中させて、廊下の様子をうかがってみる。野次馬たちの騒ぐ声で想像するに、手を出した方、つまり結果的に勝った方は去っていったようだ。まるでヒーローだな。
 勝者が去り、野次馬たちもぞろぞろと去っていく。敗者の泣き声が廊下に残る。無常だな。


3、


 今は授業中。
 さっき喧嘩見物していた野次馬くんたちの話に、僕は耳を傾ける。
「あの女子、強かったな」
「ああ。今年の一年の女子で一番強い、って言われてた反町を一発で泣かせたんだから、ただもんじゃない」
 反町? まさか中学時代、誰もが恐れていたあの反町か? あいつが泣かされたのか?
 ・・・・・・・・・万歳だ。なんとなんと、こいつは嬉しいや。
 ひとりで喜びつつ、再び耳を傾ける。教師の方ではない。野次馬くんたちの方へ、だ。
「あの強い女子、何組だった?」
「四組だよ。こないだ小林んとこに遊びに行ったときに見かけた」
 もう一人、会話に参加したようだ。
「あんなちっちゃい身体で、よく反町なんかに向かえたよな」
「ぐーだぜ、ぐー」
「怖ぇよな、最近の女子っ・・・」
 彼が急に黙ったので、気になってそっちを(チラッと)見てみると、彼が隣の席の女子ににらまれているのが見えた。はっはっは。・・・やっぱ、怖ぇや。
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[ 2006/05/17 18:50 ] ストーリー | トラックバック(-) | CM(0)
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