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趣味で書いてる文章をのっけてます。

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森 

 落ち葉が舞い、どんぐりの降り注ぐ森の中。彼は歩いていた。
 足元は、まだ落ち葉の積もっていない土の肌が流れていた。
 彼は、色づいた葉の隙間から空を眺めていた。
 突然、大きな音がした。なにか大きなものが落ちる音。

 なにか大きな、そう、人間のようなものが、いや、それよりもっと大きなものが、それが木の上から落ちたような、いや、飛び降りたような、そんな音だった。それが、彼の背後から聞こえたのだ。

 彼は、動けなかった。
 
 この森には天狗が出る。
 それを聞いてここに来たのだが、不気味な森に恐怖感が段々と頭をもたげてきた。彼は、いま、帰ろうと思ったところだったのだ。

 天狗が、私のうしろに、いる?
 振り向けない。
 振り向いた途端に、あの長い鼻が、赤い顔が、大きな目玉が現れそうで、怖かった。

 赤ら顔、堅く長い鼻、ごわごわと尖った白い髭、黒く大きな鋭い目。
 想像してしまうと、途端に恐怖感が倍増する。
 背後のなにかは、動かないようだ。音がしない。黙っていた鳥たちが、また鳴き始めた。
 気のせいだったのかもしれない。

 天狗など、いるわけがない。

 彼は、ケリをつけて去ろうと決めた。
 ちらっ、と振り向いて、なにも無いのを確認してから戻ろう、と。
 ほんの、ちらっ、とでいいんだ。

 なにもなかった。
 なにも、いなかった。
 
 ―――目の高さには。


 見上げると、下駄の底が見えた。
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[ 2006/11/23 12:36 ] ストーリー | トラックバック(-) | CM(0)
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